以下の議案、総会宣言、討論のまとめはそれぞれ、6月14〜15日の定期全国総会で採択されました。 |
第49回全国総会議案(5月の執行役員会で決定、6月号に掲載)第1章 戦争が継続する世界と戦争の準備を進める日本 (1)国連憲章も国際法も国際ルールも無視するトランプ政権 2025年2月4日、アメリカのドナルド・トランプ大統領は、ガザの住民を強制的に移住させ、ガザをアメリカが「所有」して開発すると発言し、各方面から強い批判の声が上がっている。イスラエルに武器を供与し、ガザを徹底的に破壊し、5万人以上の虐殺を容認しているのはアメリカだ。ガザに住むパレスチナの人々は、戦後のイスラエル建国によって土地を奪われ、逃れて来た人々の子や孫にあたる。このような歴史さえ一切無視して、住民の移住を強制することは国際法上許されないし、19世紀の帝国主義国による植民地支配を想起させる。 ウクライナ戦争に関しては、トランプ大統領がロシアによる侵略を容認するする姿勢で「和平」を進めようとしている。 また、トランプ大統領は4月に貿易相手国に一方的に関税の大幅引き上げを導入すると発表した。これはアメリカの貿易赤字の解消、国内製造業の衰退・雇用減少に対する自国の利益のためだけの対策で、アメリカがこれまで進めてきた新自由主義の下の「自由貿易」のルールを自らが壊すことであり、アメリカ帝国主義の「落日」を象徴している。 (2)米軍と自衛隊、戦争準備の新たな段階へ 3月7日、石破茂首相とトランプ大統領の間で日米首脳会談が行われた。共同声明の中の自衛隊と米軍の「指揮・統制の枠組みの向上」との文言を受け、3月末に陸・海・空の自衛隊「統合作戦司令部」が発足した。これは、自衛隊の統合された「司令部」が米軍の指揮下に置かれ、戦時において敵基地攻撃も日米一体で行うものだ。沖縄はじめ南西諸島では、中国を睨んだ自衛隊基地の増強とミサイル配備がすすめられている。中国に対する戦争準備の新たな段階といえよう。また「北朝鮮とロシアの軍事協力」に対抗する必要性、「北朝鮮に対応」するため「日米韓3カ国パートナーシップ」が重要であることなども確認している。3月の日米首脳会談は、東アジアの軍事的緊張を一層激化させるものであり、容認できるものではない。 また、日本学術会議のあり方を転換し軍事研究に道を開く改悪法や「能動的サイバー防御」導入に向けた関連法などにより、思想・情報を統制して人権を制約可能な「戦争できる国」づくりが着々と進められている。 (3)核兵器の廃絶を求め、東アジアに平和を 2024年10月、ノルウェー・ノーベル委員会は、日本原水爆被害者団体協議会(被団協)にノーベル平和賞を授与した。受賞理由では「核兵器の使用は道徳的に容認できないとの悪の烙印」を押す「核のタブー」を、被団協の努力によって国際的規範として確立させたと述べた。また、被団協および他の被爆者の努力が約80年近く戦争で核兵器を使用させなかったとし、市民の力が核戦争を防いできたとした。 しかし、先の日米首脳会談では、核の「抑止力」について、引き続き「米国は核を含むあらゆる能力を用いた日本の防衛」に関与するとしている。核兵器の保有が「抑止力」として必要とされ、ウクライナ戦争ではロシアの核威嚇が行われるという状況も生まれている。 25年3月に開催された核兵器禁止条約第3回締約国会議で採択された政治宣言では、核兵器廃絶は「単なる願望ではなく、世界の安全保障と人類の生存にとって必須」だと強調された。被爆80年の今年、日本が核兵器禁止条約に加盟し、東アジア地域に核兵器の廃絶を呼びかけていくことが求められている。 24年7月、全国革新懇などの主催で「いま東アジアの『平和の準備』をどうすすめるか」というシンポジウムで、「平和をつくる主体」の議論の中で清末愛砂氏(室蘭工業大学)は「平和とか人権というのは公権力から与えられるものではなく私たちが勝ち取ってきた、勝ち取るべきもの」だ、市民社会が連帯して手を結び合って「平和の主体」としてがんばることが必要と発言した。協会が「平和の主体」として、平和の世論形成にどれだけがんばれるかが問われている。 (4)激動の韓国情勢 2024年12月3日、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は突如「非常戒厳」を発令し、軍による国会の封鎖もねらった。しかし、急遽集まった市民と国会議員によって戒厳布告は阻止され、12月14日には国会前に200万人におよぶ市民が集まる中で、国会が大統領の弾劾を決議した。その後、25年4月4日、憲法裁判所は尹大統領の罷免を裁判官8人全員一致で決定した。 この間、幾度となく集会に集った数十万、数百万人の韓国市民が大統領弾劾・罷免運動を推進した。その行動の先頭に立っていたのは20代・30代の若い女性たちで、応援棒(ペンライト)を振りながら、声をあげ、Kポップアイドルの歌をうたって、従来の集会・デモの様相を大きく変えていた。韓国の若者たちによる新しい民主主義の力が発揮されている。 6月3日には大統領選挙が行われる。「共に民主党」の公認候補は李在明(イ・ジェミョン)氏と決定された。市民団体の中では、この選挙で市民とともに新しい韓国社会に向けて社会大改革を実現する民主政権をつくることを展望しているところもある。 (5)軍事費を削減し、福祉、教育、減税に 2024年10月の総選挙で自公政権は過半数割れとなった。物価の高騰、異常な米価高騰、これに追いつかない「賃上げ」の結果、国民生活は苦境に追い込まれている。こうした状況で、一部野党は「103万円の壁」の引き上げ、「教育無償化」などの部分的改良の受け入れを理由に、自公政権の補正予算、本予算に賛成し、その延命を手助けした。国民生活を少しでも支えるには、社会保障や教育・子育て予算を増額し、消費税の減税が求められるが、その財源として軍事費の削減や大企業への優遇税制の廃止・縮減を求める野党を増やさなければならない。 2022年の「安保3文書」で5年間43兆円の大軍拡計画が閣議決定され、政府は2027年度には軍事費をGDP2%にしようとしている。25年度予算の軍事費は8.7兆円にのぼり、その増加額は3年間で3.3兆円と突出している。石破首相は3月の日米首脳会談で27年度以後も軍事力を「抜本的」に「強化」することをアメリカに約束した。 戦争の準備ではなく、憲法9条を生かした平和外交によって国の安全を保持するという世論をつくっていくことが、私たち国民の生活を向上させるうえでもたいへん変重要だ。 第2章 第48回全国総会(23年6月)以降の活動経過と今後2年間の重点課題 (1)組織強化・会員拡大の取り組み 前大会からの2年間で地方組織の増減はないが、岡山の組織活動を継承できたことが特筆される。岡山は2021年に組織消滅の危機に瀕していたが、継続・再建の中心となる会員と本部がよく相談し、元会員の回復までは至らないものの、少数ながら組織を維持してきたことが、後述のような協会としての重大な役割を発揮する基礎となった。また、埼玉・小川支部では少人数で続けられていた総会に、県連会長を呼んで25人を集め、組織再強化へ足を踏み出すなどの経験も報告されている。 前総会決定で「組織の中心となる人物が高齢化や病気により実務を担えなくなった際に、どのように組織を存続させるのか、比較的規模の小さい支部では大きな課題に直面している」とした状況で、本部が関係各所とよく連絡し、本部役員を派遣するなどして組織の現状を把握する努力を継続していくことが重要だ。24年6月には本部役員が宮城、岡山、広島を訪ねて直接懇談し、組織の現状や直面する困難などについて意見交換して、組織の維持・強化への課題を共有した。 また、会員数では前総会比で、会員はひと桁のマイナス、準会員はプラスとなっており、減少続きだった会員数に一定の歯止めをかけることができた。中でも神奈川が会員・準会員を含めて15名以上を増やしていることが特筆される。学習会やイベントなどの各種行事の実施と、その機会を逃さずに入会を訴えることの重要性を再確認したい。 協会本部結成70周年に開催される今総会を機に、すべての都道府県連・支部の役員・会員が常日ごろから組織拡大に注力することが求められている。女性と若者の会員・役員を意識的に増やす課題では、少しずつでも前進できるよう計画を持とう。埼玉で新役員に2名の女性を迎えたことは重要な実践だ。 厚生労働省がコロナ感染症を2023年5月に、結核、SARSなどの2類から、季節性インフルエンザなどと同じ5類に変更したことも契機となり、集会、講演会やフィールドワーク、会食などの行事が全国的に拡大した。協会でも従来より取り組んできたそうした活動が再開され、これまで入会に至らなかった人への接触の機会が増えていることは間違いない。 組織拡大の基礎となる魅力ある組織づくりの課題では、高知、群馬、埼玉、川崎などで会員の親睦を深める花見や望・新年会などを開催しており、とりわけ石川の山菜交流会やキムチづくりは季節の行事として定着してきた。京都でも「青春クラブ」というユニークな企画で、女性の参加者も多く、活動に多様性をもたらしている。 組織拡大のためには、大阪で実践されている「連続コリア講座」やフィールドワークなど、従来強調されてきた「例会方式」により、定期的、継続的な集会や行事に取り組むことが重要だ。その際、映画・ドラマ、伝統芸能、文学、K-POP、スポーツ、食文化など多彩な切り口で参加者の幅を広げて、新しいつながりを得ることが欠かせない。そのためにも、ホームページやブログ、フェイスブック、インスタグラムなどのSNSの活用を強化して、広い世代の会員拡大に向けて取り組む。 (2)本部の活動と国際活動・機関紙活動 2023年6月の全国総会は群馬県前橋市で開催され、埼玉、東京、川崎、神奈川、石川、愛知、京都、大阪、広島からの参加者に加えて、地元群馬からの30名以上の参加があり、近年では最多となる71名が参加した。オプション企画で群馬の森の「朝鮮人追悼碑」を見学し、歴史歪曲の立場に身を置いて碑の撤去を目論む群馬県との攻防の経過を学び、碑に示された「記憶 反省 友好」の精神を広めることを誓い合った。 24年の6月には石川県金沢市で全国交流集会を開催し、宮城、群馬、埼玉、東京、神奈川、京都、大阪、広島と地元石川から計45名が参加し、正月の地震の被災者からの訴えもあり、地元のお酒と魚やそばなどの懇親会料理が大好評だった。オプション企画では尹奉吉(ユン・ボンギル)義士の暗葬の地を訪ね、植民地支配下の抵抗闘争について学んだ。 全国理事会は23年10月、24年4月と10月、25年5月に開催され、オンライン併用のハイブリッド方式が定着したことにより、遠方からの参加のハードルを下げている。会議では活動方針についての諸決定を行うとともに、時々の情勢討議や全国各地の経験が報告され、総会と総会の間の必要な意思決定を行なった。また、この間、全国理事会参加者への交通費補助金の支給を再開し、また金額も増額して本部としての財政的責任の一端を果たすことができるようになった。 本部執行役員会は毎月欠かさずに開催され、情勢討議と諸課題の推進を継続してきた。 国際活動では、韓国進歩連帯の幹部などとの個人的な付き合いの領域を超え、24年11月には石川の韓国フィールドワークで22名が進歩連帯事務所を訪問して懇談したのに続き、25年3月には本部韓国ツアーのプログラムとして、関原正裕会長、宮川泰彦代表理事ほか、埼玉、東京、川崎、神奈川、石川、大阪の各地から20名が進歩連帯事務所を訪問して懇談した。日朝協会の会長と韓国進歩連帯の共同代表が対面で懇談する初めての機会となったが、この機会に日朝協会紹介文、質問書などの文書を朝鮮語に翻訳して持参し、韓国内に協会の活動を周知するツールとして活用したことは重要だ。本部の韓国ツアーではソウルで「市民の会・独立」と、釜山で「平和と統一を開く人々(SPARK)」とも同様に懇談したことは、協会の今後の国際活動に大きな可能性を広げる契機となった。日韓市民の連帯を今後も強化していきたい。 広島では原水禁世界大会のために来日した韓国代表らとの交流を続けている。同じく広島で24年6月に開催された韓国の市民団体(SPARK)主催の「米国の核兵器投下の責任を問い質す原爆国際民衆法廷・国際会議」には本部からの役員派遣と広島からの参加があった。 機関紙「日本と朝鮮」では1面トップ記事に、協会活動の方針や訴え14本、植民地支配に関わる記事6本、朝鮮半島情勢4本を掲載したほか、「新しい仲間だより」のコーナーを新設して新入会員の声を伝え、結成70周年にあたっては「日朝70thリレートーク・歩みを振りかえる」連載で協会活動の歴史を回顧して、全国の運動を励まし、会員、読者の関心に応える紙面づくりに尽力してきた。 本部と地方組織の情報交換や意思疎通は改善しつつあり、毎月のレターに加え、メーリングリストでの情報発信も重ねられている。多くの地方組織が地方版の機関紙を発行しており、会員とのつながりを強めるツールとして力を発揮しており、一層の充実と未発行組織の発行への努力を求めたい。 (3)財政状況の改善 本部財政は地方組織からの協力を得て、危機的状況を脱してきた。一方で経費節減のために活動範囲が縮小している側面もあり、安定的な本部財政を構築するためには、事務所を共有する東京の財政状況の改善が欠かせない。 本部財政収入の10%近くを占める夏冬の特別募金については各地方組織の積極的な協力の結果、23年夏季は京都、東京、埼玉、広島、群馬、石川、大阪、北海道、北九州の8組織と個人で予算の86%、23年冬季は京都、東京、埼玉、広島、北海道、群馬、北九州、石川、大阪、福岡の10組織と個人で予算の98%、24年夏季は京都、埼玉、神奈川、群馬、石川、広島、北海道、大阪。高知の9組織と個人で予算の72%に、24年冬季は京都、埼玉、北海道、神奈川、愛知、石川、広島、大阪、高知、福岡、北九州、川崎の12組織と個人で予算の76%に達した。募金に応じられていない比較的大きな組織を中心に、組織内での位置づけを明確にして取り組むよう要請を強める。 (4)植民地支配をなかったことにさせない活動 韓国で「親日派(植民地支配協力者)」と植民地支配を肯定するニューライトに支えられる尹錫悦政権がスタートすると、対日「歴史問題」で妥協を重ねてきた。その結果、強制労働被害者救済にあたっては日本の国家責任は不問となり、加害企業は謝罪も賠償もしない「解決策」が合意された。「佐渡島の金山」も世界文化遺産への登録が決まるには、戦時強制動員を隠蔽しようとする日本政府と同調する尹政権の妥協があった。 こうした韓国側の姿勢もあって、日本国内でも従来の歴史修正主義がさらに勢いを増している。24年2月には山本一太群馬県知事による群馬の森の「朝鮮人追悼碑」破壊・撤去が実行に移されたのに対し、民族ヘイト発言が「人権侵犯」と認定された杉田水脈(すぎたみお)衆議院議員(当時)は「本当に良かったです。日本国内にある慰安婦や朝鮮半島出身労働者に関する碑や像もこれに続いてほしいです。嘘のモニュメントは日本に必要ありません」とXにツィートした。これは、歴史修正主義者がめざすところをあけすけに語ったものだ。協会は会長・事務局長連名で「群馬の森の『朝鮮人追悼碑』撤去中止を求める声明」を発して強く抗議した。 また、2024年初めて検定合格となった中学校歴史教科書の令和書籍『国史』には「蒸し返される韓国の請求権」とのコラムがあり、「日韓基本条約を締結し…請求権協定では…対日請求権を放棄することが約束されました」とか、日本軍「慰安婦」については「日本軍が朝鮮の女性を強制連行した事実はなく、また彼女らは報酬をもらって働いていました」、「戦場を連れまわした事実はありません」などと記述している。政府の公式見解「河野談話」(1993年)を真っ向から否定する教科書を、政府が検定合格させている。 一方で24年3月には岡山市の「朝鮮人受難碑」碑前祭が30年ぶりに開かれ、市民ら60人が参加した。これには岡山の組織が深くかかわっており、岡山の代表が主催者としてあいさつするなど、歴史歪曲を許さない協会の姿勢を明らかに示した。 毎年3月1日前後に行われている「3・1朝鮮独立運動」日本ネットワーク(協会本部などで運営)主催による集会が24年は板垣竜太同志社大学教授らの講演、25年は吉澤文寿新潟国際情報大学教授の講演を中心に開催された。3月1日当日には新宿で街頭アクションを実施して、植民地支配の歴史を繰り返し学習・普及する機会を提供している。3.1独立運動記念の集会には京都、埼玉でも取り組んでおり、協会の存在意義を示している。同ネットワークでは毎年9月にも「日朝平壌宣言」記念の集会も開催を継続している。引き続き、同ネットワークの諸活動を推進し、関係諸団体との「共闘」をすすめる。 また、日本での強制連行・強制労働に関わる地を訪ねるフィールドワークは北海道、石川などで実施され、山口の長生炭鉱での慰霊祭や遺骨収集活動に関わって、本部、広島、高知から訪問・参加して主催者を励ました。この問題では国会質問などで国の援助が求められているが、政府は応じようとしない。神奈川は相模湖・ダム建設殉難者追悼会への、京都は浮島丸殉難追悼集会への参加を呼びかけ、強制連行・強制労働への国民的理解を促進するよう努めている。各都府県での「平和のための戦争展」などにおいても、朝鮮半島に対する植民地支配の加害を明らかにする展示や解説により、協会の役割を発揮している。 新大統領が誕生する韓国に対して、民主党派の候補が当選した場合には、「反日国家」、「謝罪ばかり求める」といったネガティブキャンペーンが展開されることは必定であり、マスコミや右派ネットメディアに負けない宣伝が必要とされる。日本政府はアジアへの加害責任、植民地支配責任を認めようとせず、植民地支配のもとでの朝鮮人強制連行に対する政府の姿勢が問われている。侵略戦争に対する日本政府の姿勢は、多大な犠牲を強いた国民に対しても、海外の人々に対しても過去の戦争の記憶を隠蔽・忘却しようとするものであり、戦後80年にあたり、政府の姿勢を変えていくことは協会の大きな課題といえる。 (5)朝鮮・韓国を知り、東アジアと世界の平和を求める 協会の重要な活動として、各地でフィールドワークが取り組まれた。東京、神奈川では高麗博物館と新大久保のコリアンタウン、大阪、京都ではコリアンタウンと歴史資料館を訪ねて新会員の加入にもつながった。 埼玉の高麗神社、京都の大津渡来人歴史館、川崎の登戸研究所、大阪・石川の奈良や京都へのフィールドワークなどが古代から近代までの多様なテーマで実施された。 海外ツアーを再開した本部、石川、大阪に学び、韓国ツアーを企画しよう。今、韓国の政治情勢とも関わって、韓国の民主主義への社会的関心が高まっている。この機を逃さず、国内外のフィールドワークを実施しよう。 高知では日本軍「慰安婦」問題を描いた「雪道」と日本の植民地支配を背景とした「ボストン 1947」の映画上映に取り組んで、それぞれ230名、163名が入場する成功を収め、会員拡大にもつながっている。 北海道、石川ではハングル講座も継承されており、他の地方組織での取り組みも期待されている。 また、韓国の政治情勢の激動を受けて、東京、高知、神奈川などでジャーナリストの栗原千鶴氏の講演会に取り組み、埼玉でも学習会を開催した。本部でも「民主主義を守り進めた韓国の人々に連帯する」事務局長談話を発して市民的関心に応えた。朝鮮戦争をテーマとする学習会も埼玉、京都、高知、神奈川(共催)で開催されたものの、朝鮮半島の平和と統一を求める運動の実践は少なかった。 さらに、ガザ侵略に関しては2023年11月に本部執行役員会の声明として「日本政府は武力により他国を占領した過去を持つ国として、イスラエルにガザ武力侵攻の停止・停戦を求めよ!」を発して攻撃の中止を呼びかけた。 本部では日本平和大会実行委員会に参加し、鹿児島へ役員を派遣するなど平和大会の成功に寄与するとともに、原水爆禁止世界大会に広島の組織を先頭に参加してきた。日本平和委員会全国理事や憲法改悪阻止各界連絡会議(憲法会議)参加団体として改憲阻止と反戦平和の隊列に加わって活動しており、地方組織でも平和団体としての活動も意識的に追求されている。 (6)在日コリアンの諸権利の擁護とアンチ・ヘイト、関東大震災朝鮮人犠牲者追悼の取り組み 東京、埼玉、群馬などでは関東大震災時の朝鮮人虐殺犠牲者追悼行事に取り組んでおり、協会が行事の実施に主要な役割を担っている。2023年は事件から100年目にあたり、東京、埼玉の会長は日韓の新聞、テレビ、ネットメディアの取材や各地での講演会に引っ張りだこの状態だった。東京では6月にプレ学習会を開催し、山田朗明治大学教授の講演に130名が集まり、神奈川では協会など3団体主催の学習会に260名を集めて大成功させた。協会本部や地方組織が主催団体に加わる100年記念の大集会(8月・1,800名)やシンポジウム(10月・オンライン含め330名)でも、東京、埼玉、群馬の3会長が報告を行なった。 群馬では別々に執り行われてきた追悼行事が統一して実施されるようになり、埼玉では他団体と新たな実行委員会を結成して追悼行事を行なうなど、協会が一層の重責を果たしている。23年7月には関原会長の著書「関東大震災朝鮮人虐殺の真相」が発行され、本部でも普及活動に取り組んだ。 24年9月の東京での関東大震災朝鮮人虐殺犠牲者追悼式典にあたっては、小池百合子都知事がこともあろうに、ヘイト集団「そよ風」が求めた同日、同慰霊碑前での集会に使用許可を与えるという暴挙に及んだ。これには若者を含む多数の市民が抗議の声をあげ、事実上開催中止に追い込んだ。 埼玉では大野元裕県知事が記者会見で、「朝鮮人に対する虐殺があったということについては、痛心に耐えない」と述べていたが、届いたメッセージは「震災で犠牲になられた全ての方々の御霊に、衷心より哀悼の意を捧げます」というもので、「朝鮮人」も「虐殺」という言葉もない、事件を隠蔽する役割を果たしかねないものであった。 「高校無償化」や「幼保無償化」から朝鮮学校・幼稚園を排除する政策に反対し、朝鮮学校と交流・支援する運動は大田や小平(いずれも東京)、神奈川、広島などで続けられている。永住外国人の地方参政権付与を実現する課題とともに、在日コリアンの諸組織や他団体とも協力して粘り強く運動を進める。 日朝間の対話が閉じられている今、あらゆる差別を許さず、在日コリアンの生活と権利を守る運動に引き続き、協会組織を挙げて取り組む。罰則付きのヘイト禁止条例を全国に普及するために力を尽くす。 日朝協会 第49回全国総会宣言日朝協会は2025年6月14日(土)・15日(日)の2日間、東京都内で第49回全国総会を開催しました。総会には以下のスローガンを掲げました。 〇70年の協会の歩みに確信をもって、未来を切り開く活動に邁進しよう!<サブスローガン>
このような中、日本政府は「中国・北朝鮮の脅威」を煽り、巨額の軍事費をもって軍拡を推し進めています。今年3月に行われた日米首脳会談では、米軍と自衛隊の指揮統制強化が謳われ、米軍と一体となった戦争準備に取り掛かっています。2024年10月に日本原水爆被害者団体協議会がノーベル平和賞を受賞するという快挙を成し遂げたにもかかわらず、米軍の「核のカサ」理論に固執し続けている点も、戦争被爆国の政府として許しがたい姿勢です。 日本国内における歴史修正にも拍車がかかっています。2024年2月、群馬県知事は、市民の反対を押し切り朝鮮人追悼碑を破壊しました。同年には、日本軍「慰安婦」問題で軍の関与を認めた「河野談話」を真っ向から否定する中学歴史教科書が検定に合格しました。今月の韓国大統領選挙以降は、候補者を「親日」「反日」という歴史的事実を蔑ろにする主観的概念でジャッジする報道が数多く流れ続けています。 今年は朝鮮半島の解放80周年・日朝協会創立70周年を迎える節目の年です。今総会では、国内外で平和を脅かす動きに徹底して抗うことが確認されました。そのため、仲間増やしを重視して協会の組織を強化し、活動を発展させていくことが確認されました。総会決定を会員に届け、みんなで話し合い、楽しい企画や学びの機会を設けて、より多くの人々と一緒に、かかげたスローガンを実践します。
2025年6月15日
日朝協会第49回総会 全国総会議案 補強・修正日朝協会第49回全国総会議案は、5月の全国理事会ならびに全国総会での議論を経て、決定しました。2025年6月号掲載の議案のうち、以下のとおり補強・修正します。・第1章戦争(4)「激動の韓国情勢」最終段落を書き換えます。 6月3日には大統領選挙が行われ、「共に民主党」の公認候補は李在明(イ・ジェミョン)氏が当選した。市民団体の中では、この選挙で市民とともに新しい韓国社会に向けて社会大改革を実現する民主政権をつくることを展望している。 ・同(5)「軍事費を削減し、福祉、教育、減税に」4行目 「国民生活」を「市民生活」と書き換えます。 ・第2章(2)「本部の活動と国際活動・機関紙活動」第4段落の後に次の段落を挿入します。 25年は協会結成70周年にあたる。すでに3月に実施した「植民地支配の歴史をたどり、市民と交流する旅」に続き、6月には全国総会のさ中70周年祝賀会、11月には大阪でシンポジウムを開催するほか、70年の歩みを振りかえる年表の出版を計画している。 ・同(3)「財政状況の改善」12行目以降の文章を差し替える。 24年冬季は京都、埼玉、北海道、群馬、神奈川、愛知、石川、広島、大阪、高知、福岡、北九州、川崎の13組織と個人で予算の80%に達した。 ・同(5)「朝鮮・韓国を知り、東アジアと世界の平和を求める」に次の文章を挿入します。 協会は結成以来一貫して朝鮮(民主主義人民共和国)との国交正常化を求めて運動してきた。日本政府が日朝平壌宣言に立脚して、国交正常化交渉を進めるよう強く求め続ける。 ・同(6)「在日コリアンの諸権利の擁護とアンチ・ヘイト、関東大震災朝鮮人犠牲者追悼の取り組み」の最後の文を以下に書き換えます。 SNSやネット上でのヘイト表現を許さず、罰則付きのヘイト禁止条例を全国に普及し、国としての差別禁止法の制定を求めて力を尽くす。 全国総会討論のまとめ今総会には北は遠路、北海道からの参加者がありました。石川、宮城からの参加もあり、全国の仲間に大きな励ましとなりました。京都、大阪からも大勢の参加があり、大きな力を得た思いです。総会では1日目の全体会でのべ13人が発言しました。2日目には3つの分散会にそれぞれ15人、7人、9人が参加し、全員が発言しました。2日間で都合46人の発言がありました。 いくつかの特徴的な発言を紹介し、本部としての見解を述べます。 まず、尹奉吉(ユン・ボンギル)義士の評価に関わって、テロリストを顕彰することにならないかという懸念が表明されましたが、日本による暴力的な植民地支配という歴史的条件があり、ナチス支配下のヨーロッパでのナチス高官殺害と同様にレジスタンスととらえるべきものと考えます。 また、朝鮮民主主義人民共和国の兵士がウクライナ戦争の戦場に派遣されたことで、日本国民の間に不安の感情が増すという懸念が表明されました。確かにそうした危惧はあるものの、誰であれ戦争に加担することは間違っているという立場が大事なのであって、ウクライナへの武器支援も、イスラエルのジェノサイド容認も誤った行為であることを意識すべきではないでしょうか。戦場の異常を考えれば、あくまで話し合い、外交によって問題を解決する姿勢こそ重要です。 大阪で実践されている「月例方式」はこの10年ほど協会内で重視されてきましたが、やはり展望のある方向を示しています。毎月ひとつは、少数でも会員が参加する行事=集会や講座やフィールドワークなどを積み重ねていく、地道な活動の重要性があると思います。 他団体との協力・共同についての発言も目立ちました。いろいろな行事を共同で開催することなどで、日朝協会を知ってもらう機会にもなりますし、民主団体や労働組合の中で、朝鮮半島問題の専門家としての役割も果たせるという積極的な発言もありました。 世代の違いがコミュニケーションを困難にしているという発言もありました。SNSの熟達や活用が役員には求められています。同時に、世代間ギャップはあっても、自分たちよりも若い世代への対話をあきらめない、働きかけを続けることの大事さも強調しておきたいと思います。 最後に、事務所を常設している地方組織がほとんどないことから、活動の資料=歴史が個人に託されてしまい、将来的には資料の散逸、紛失につながる懸念も明らかにされました。重要な視点であり、全国の組織で対応すべき問題といえます。今後の経験交流などで深化していきたい課題です。 以上をもって、2日間にわたる討論のまとめといたします。 (事務局長 今野耕太)
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